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2014年11月07日
「COFFEE TRAM」 東京・恵比寿・珈琲専門店
僕に深煎り珈琲の醍醐味を教えてくれた
東京・表参道にあった「大坊珈琲店」が店を閉めのが昨年末。
初めて「大坊珈琲店」への階段を上ったのが1975年のこと。
思えば長く通ったものだ。
不思議なことで、数ヶ月空いていても、それが一週間でも
店主・大坊さんとの距離感は変わらない。
いつも淡々と同じ感じで話ができた。
僕にとっては東京の数少ない基地であった。
東京に「大坊珈琲店」があるから東京が愉しい、
という感覚さえ持っていた。
同じように、あの人がいるから東京が愉しい、
また訪れたいということもあったが、
残念ながらそういった人たちが、
鬼籍に入られてしまった。
ときおり、あの人が東京にいないのかと、
ふと思うことがいまでもある。
そんなことを思っているときに
「あの大坊で修業をした人の店があるらしい」との情報を得た。
そして大阪・西天満の「エルクコーヒー」で
その店の豆をつかった珈琲を飲んだのだ。
あの苦みが蘇ってきた。
これはその店に行かねばならないという思いを強くした。
丸の内で仕事を終え山手線で恵比寿に向かう。
恵比寿駅から電話を入れ、道順を聞く。近い。
確かに数分歩いたところにその店はあった。
やはり2階。
階段を上る。
ドアは小さい。
入ると照明は仄暗い。
カウンターに座ると、ちょうどその前で
店主がネルドリップを巧みに扱っていた。
その仕草は、まさに「大坊珈琲店」のそれと酷似していた。
ポットを持つ右手は動かない。
ネルドリップを持つ左手が円を書くように少しずつ動く。
そして香りが漂ってくる。
いいなあ。
うれしくなってきた。
ブレンドを飲んだ。
温度も熱くない。
苦みを感じる、そしてその奥からかすかな甘みがやってくる。
いろいろな記憶が蘇ってきた。
初めて「大坊珈琲店」を訪れたときの情景や、
京都を離れて久しい旧知の友人とばったり
大坊のカウンターで再会したこと。
その彼が去ったあとに大坊さんが
「あの方は、ほぼ毎日こられるのですが『二番』と仰るとの
『ごちそうさまでした』と言われるだけで
他のことは話したことがないのです」と言われ、
彼の職業を説明したことも思い出していた。
当時アパレルの仕事をしていたその彼は
いま京都に戻り、古書店を営んでいる。
ガトーショコラもお願いした。
しっかりした固さがある。
それとブレンドのほどよいマッチングも見事であった。
「大坊珈琲店」で二年余修業をしたことを聞いた。
この日は、あまり時間もなく、飲み終えすぐに店をあとにした。
営業時間は10時から19時まで。
ラストオーダーは18時半。
夜はバーになるという。
バーの昼間の時間が珈琲店になっているのだ。
次回もこの店にはやってくるだろうと思いながら、
階段をおりていた。
ブレンド珈琲の豆を100グラム購入した。
この艶やかな色合い。
なんだか安心するのだ。
「COFFEE TRAM」
東京都渋谷区恵比寿西1-7-13 スイングビル 2F
03-5489-5514
投稿者 geode : 01:09