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2017年02月24日
「美美」 博多・赤坂・コーヒー専門店
博多・赤坂にあるコーヒー専門店の二階カウンターに僕は座った。
窓の外は冷たい雨が振っている。
メニューを開く。
ヤンニハラールモカにしようと思ったところ、バニーマタルモカという文字が目に飛び込んできた。
「イエメンのものです」との説明を受けた。
そちらを選択した。
ヤンニハラールモカとは、異なる香り。甘さを強く感じた。
そしてしばらく目を閉じ、昨年の夏の出来事を思い出していた。
そのときの様子を書いた文章です。
■夏の終わり、僕は博多にいた。尊敬するコーヒー店「美美」の席で、マスター・森光宗男さんにすすめられたヤンニ・ハラールモカを飲み、そのたおやかな香りと苦味と酸味のバランスに溜飲を下げた。やはりこの店ではモカを飲もうと決めた。その後マスターが「いまこの器具を開発しているのです」と嬉しそうな笑顔で説明してくださったのが「ねるっこ」というネルドリップ愛好家には極めて重宝する道具であった。点滴抽出が可能となる器具。「最後の仕上げを残すだけとなりました」とも仰られた。十月一日に東京で大坊勝次さんとトークショーをするとも。器具は完成し、森光さんはその講習を兼ね韓国に行かれ、帰国時の空港で倒れられ、そのまま夜空の星に昇ってゆかれた。突然の知らせに一瞬時間が止まり、眼前が暗くなった。さまざまな思いが去来する。コーヒーという液体をどこまでも追求された森光さんの笑顔は、ずっと僕の守護神のように煌き続けるのだ。
「イエメンのものです」とは森光さんの奥様・充子さんが、コーヒーを淹れながら話されたのだ。
豆をハンドピックされ、数粒をミルで挽き、前のコーヒーの味わいを融和する。
そこからネルドリップに移し、ゆっくりと抽出される姿は、森光さんを想起させて十分である。
そしてカウンターの後ろには森光さんの笑顔の写真が飾られていた。
「亡くなる前日の写真です」と。
博多の「美美」でまたモカが飲めることのありがたさをしみじみ感じていた。
「美美」
福岡市中央区赤坂2-6-27
092-713-6024
投稿者 geode : 01:54