門上武司のおいしいコラム

2021年10月01日

料亭で食事をする。
久しぶりの機会である。
いい緊張感に包まれる。
床の間に飾られた軸などが素晴らしい。

八寸　虫籠に入っている

　かます焼目寿司
　鱧の子落雁
　琵琶鱒真砂和え
　栗茶巾　翡翠銀杏　松葉素麺
　いちょう芋　海老共焼き

これぞ料理屋の仕事という感じがする。
八寸が醸す季節感の精度が極めて高い。

先付
胡桃豆腐　デラウェア　山葵餡　花穂紫蘇

デラウェアが生きる。

向付　一
明石鯛　さごし焼霜　あしらい一式

鯛の味の分厚さに感銘である。

向付　二
鮪　黄味醤油　辛子

この組み合わせは定番　黄味醤油のコクが鮪の脂分と拮抗する。

蓋物
豊年椀　伝助穴子　松茸　小蕪　三日月豆腐　松葉柚子

迫力の賜物。
伝助穴子の力強さ、松茸の香り、豆腐の優しさ
それらが三位一体となって口中から胃袋を占領してゆく。

焼物　一
香りとコクの共演

子持ち鮎塩焼き　蓼酢　クレソン　オリーブオイル
サクッと全身を食べる。
香りが素敵だ。
子の旨みもうれしい。

焼物　二
朴葉焼き　無花果　エリンギ　枝豆　朴葉味噌

攻めの料理が続くところが「菊乃井」という感じだ。

強肴
冬瓜蒸し　すっぽん　鮑　ふかひれ
青万願寺唐辛子　生姜　柚子

食べる側に中華の料理人がいたので
ある種のメッセージのような気がした。
勝負の一品。

御飯
地鶏栗御飯　地鶏　栗　三つ葉
止椀
枝豆すり流し　粟麩　へぎ柚子
香物
胡瓜どぼ漬け　茄子糀漬け　割干し大根

水物
シャインマスカットパフェ　ミント
マスカットソルベ　ワインジュレ

初雁
抹茶

料亭で食事をする意味を改めて考えたのであった。

「菊乃井」
京都市東山区下河原通八坂鳥居前下ル下河原町459
075-561-0015

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村田吉弘（株式会社菊の井/NPO法人日本料理アカデミー理事長）
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