門上武司のおいしいコラム

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2022年02月01日

「ナンポルトクワ」京都・堺町錦上ル・パティスリー

この季節はリンゴのタルトが食べたくなる。
ランチ前に予約をしておいた。
ランチは餃子であった。
それもフランス料理のシェフが作った餃子。
最初はリンゴのタルトだけと思っていたが、すぐ近くに褐色のケーキがある。
どうもタルトタタン。
だが、表情が少し異なる。
「普通のタタンよりリンゴを薄くスライスしています。父親が資生堂パーラーの時代に作ったもののようです」とオーナーパティシエの西原祐勝さん。
父親とは「グルニエドール」の西原金蔵さん。
父親の仕事は受け継がれてゆく。

まずはリンゴのタルト。

焼き色が美しい。
これはリンゴの酸味が味わいを左右する。
適度な酸味と甘味、そしてタルト生地という要素がうまくバランスをとったところで完成する。
季節によって酸味は異なるのだが、それを生かしながら一定のバランスを保つのがパティシエの技術と言えるのであろう。
その完成度の高いタルトとコーヒーを楽しむ。

そしてタルトタタン。

このケーキはかなりの砂糖を使う。
砂糖が熱により溶け、それがリンゴに影響を与える。
このタルトタタンは、食感が従前のタタンとは違う。
一言で表現すれば滑らかである。
これまでのタタンはリンゴの存在感というかリンゴの形を感じながら食べていた。これは、もちろんリンゴの姿は感じるのだが、それが一体化している。
いやあ、これには感銘を受けた。
新たな出会いとの喜びを感じた。

父親の影響は受けながらの確実に自己の世界を構築する。
自由な感覚が頼もしい。